Vol.100

関東大震災から100年。防災士に聞く「防災の日にできること」

SAIBOU PARK MAGAZINEの記事100本目を記念し、編集部では防災士でもある佐多編集長へのインタビューを行いました。同時に、きたる2023年9月1日は防災の日、そして関東大震災から100年の節目でもあります。備えることへの関心が高まる今、初めて防災に気持ちが向いた方や、まだ備えが万全ではないという方へのメッセージを伺います。

100年前の声に耳を傾けて

改めて関東大震災はどういった災害だったのでしょうか?

1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒に関東地方を襲った大地震は、190万人の被災者・10万人以上の死者を出しました。その日はとても強い風が吹いていて、地震が起きたのは多くの家庭が火を使って炊事をしていたお昼どき。木造家屋が密集する東京地方では広範囲で火災が発生し、多くの犠牲者が火の手によって命を落としました。

この地震がきっかけで災害時に役立つラジオや缶詰が普及したり、揺れや火災に強い街づくりを目指し、建築基準法の基になる法律が整備されたりしました。のちの1960年、9月1日は関東大震災の教訓を忘れないために「防災の日」に制定されました(この時期に多い台風への戒めでもあります)。こういった影響を鑑みると100年前の関東地震は、今日の日本が世界に誇る「ボウサイ」の原点になった災害ともいえるでしょう。

当時の影響が現代にも色濃く残っているんですね

100年も昔の災害が今でも忘れられていないのは、それだけ社会が一変するような大惨事だったという証拠で、当時の被災者が残してくれた警告には、計り知れない価値があります。かならず再び襲ってくる災害に備えることが、先人たちの思いに応えることにもなるんじゃないでしょうか。

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備えの第一歩は何でもアリ

防災の日をきっかけに何か行動を起こしたいという方に、おすすめの防災アクションはありますか?

防災のために何かしたいと感じたら、最初の一歩は何でもOKです。ペットボトルの水を買うとか、モバイルバッテリーをフル充電するだけでも構いません。

防災は1本道を辿っていくスタンプラリーではなく、3枚つづりのポイントカードのようなものだと思ってください。というのも、家庭防災のアクションには3つの柱があるんです。

家庭防災を叶える3本柱

【1】被害を最小限にする備え
家屋の免震・耐震補強工事を行ったり、冷蔵庫や棚、プロパンガスを固定することで、家そのものが被るダメージを軽減します。ガラス花瓶を割れにくい素材に変えたり、避難経路になる廊下に物を置かないなど、ちょっとした生活習慣でも被害を減らすことができます。

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【2】家から逃げて生活を立て直すための備え
倒壊や火災、浸水の危険が迫った場合は命を優先し、とっさに家を捨てなければなりません。保険による補償範囲の見直し、家の周辺ではどんな災害が起こる危険性があるのか、どこに逃げたらいいのか。そういった下調べと、災害後も続いていく人生を立て直すために持ち出す、最低限の荷物を用意する必要があります。

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【3】ライフライン断絶への備え
電気・水道・ガス・物流が断たれることを想定しましょう。生活用水・栄養補給・排泄といった最低限の自活に向けた備えは、できれば1週間以上の分量が必要。さらに電力や熱源の用意があれば、被災後のQOL(生活の質)が高まるでしょう。

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あらゆる行動がこの3本柱のどれかには当てはまるんですね

どれかだけではダメですし、一気に全部というのは難しい。少しずつ、この3本柱に沿って考えながら用意を整えていくのが理想です。自力で情報を集めるのが大変な場合は、地域の避難訓練への参加がおすすめです。その地域ならではの防災知識やテクニックを習得できますし、近隣住民と繋がりを持つチャンスになります。

究極の目的を意識する

どれぐらい備えたら安心でしょうか?

正直な回答は「時間と予算と気力が許す限り」です。
先ほどの3本柱も含め、私たちが“防災”と呼んでいる行動の目的は「生き抜き、暮らしを取り戻すこと」です。災害に見舞われても、被害を最小限にとどめ、しなやかに復興する。このバネのようにしなり、暮らしを取り戻す力の強さは、事前に備えたエネルギーに比例します。

家具の転倒防止対策をしたり、地域の避難所を調べたり……平時から備える防災アクションに、終わりや上限・下限はありません。一方で「ライフライン断絶への備え」という観点では、最低でも3日間、できれば1週間以上の期間、外界と遮断されても自活して生き残れるだけの日用品を備蓄することを推奨しています。

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なかなか腰が重いという方にアドバイスをお願いします

お風呂に入ったり買い物をする日常生活の中で「いま揺れたらどうする?電気が止まったら?」という風に、災害をイメージしてください。

1分間スマホでハザードマップを検索するだけでも、お菓子を1つ多く買うだけでも、100円ショップの防災コーナーを覗くだけでも構いません。その小さな行動の積み重ねが、揺るぎない防災を叶えていきます

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あなただけのカスタマイズが必須

いろいろな情報が飛び交う時代ですが、正しい情報の選び方はありますか?

SAIBOU PARK MAGAZINEでもYouTubeでもTikTokでも、自分に合う所から情報を入れるのがいいと思います。いずれにしても、防災には「絶対」が存在しないということは頭の片隅に置いていただきたいです。

備えるべき内容は、周辺環境・季節・家族構成・個人の特性によって変わってきますし、これまで災害が起きたことのない地域が、未曾有の天災に襲われることも実際に起きています。こうすれば絶対に安全ということもないし、こういう災害は絶対に起こらないということもなんです。

身のまわりで起こりうる災害のリスクを知って被害を減らすこと、被災後の生活に必要なものを各個人・各家庭が考えること。一人ひとりが考えて判断して行動することが前提だと理解した上で、いろいろな情報を集めながら、防災に関心を向けていただけるとうれしいです。

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まとめ:暮らしと防災を切り離さないで

最後に、防災のヒントなどがあれば教えてください。

もし地域に語り継がれている災害があれば、その逸話に目を向けて、耳を傾けてください。過去に起こった災害は、同じ場所で同じように起こる性質があります。その地域ならではの被害記録と、対策が見つかるはずです。

SAIBOU PARK MAGAZINEは引き続き、備えるココロが進化する情報、そして防災に新しい価値を生み出す情報を発信していきます。暮らしを整える小さな行動が、もしものときの大きな安心に繋がるということを、多くの方に伝えられたらと考えています。

取材・執筆:SAIBOU PARK MAGAZINE編集部

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取材先紹介

佐多 大翼 防災士/SAIBOU PARK MAGAZINE編集長

DAISUKE SATA

出版社・IT企業を経て、2020年「SAIBOU PARK MAGAZINE」を創立。同時に運営するセレクトEC「SAIBOU PARK」と併せて、コンセプトに“「備え」のある暮らし。”を掲げる。雑誌・ラジオ等へのメディア出演を重ね、防災分野のイメージが変わるような革新的な情報を発信している。日本防災士機構認定防災士。

目次

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