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Vol.92
もうみんな避難してます!大切な人の避難を促す魔法のことば
なぜ人は逃げ遅れるのか
自分自身に災害などの危機が迫っているとき、人間の脳は危険レベルを誤って低くとらえてしまう傾向があります。「これくらいの台風なら避難しなくても大丈夫だろう」とか「まさか自分が被害にあうなんてことはないだろう」といった思い込みが代表的です。
これは日々の暮らしの中にある大小さまざまな刺激から身を守り、心の平静を保つための機能に由来します。日常生活においては心を安定させるための機能ですが、災害時には「避難が必要である」という判断を鈍らせてしまう、厄介な存在でもあります(誰もが持つ思考の偏りや思い込みによって、非合理な判断をしてしまう「認知バイアス」のひとつ、正常性バイアスと呼ばれる場合も)。
科学が見つけた魔法のフレーズ
自治体からの避難指示が住民の避難行動につながらず、災害の被害規模が拡大する事例が毎年数多く報告されている問題を受け、千葉大学の研究者らはある実験を行いました。被験者に見せられたのは複数種類の「避難を呼びかける文章」と「自然災害の風景画像」を組み合わせたもの。それらの情報をもとに被験者は「避難の必要性」を7段階で評価しました。
「もうみんな避難してますよ!」
どうすれば住民は避難してくれるのか。
その答えは「ほかの人の避難状況」を伝えることでした。自然災害が発生した際に発せられる避難指示を呼びかける文書に「ほかの人はみんな避難している」という情報を加えると、「自分も避難しなければ」と感じる人が増えることが判明したのです。
とくに危険度が低い状況においては「ほかの人はみんな避難している」という情報があると、被験者は避難の必要性を高く判断する効果があることが認められました。
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あなたにしかできない声かけがある
この研究結果は今後、自治体から送られるエリアメールなどに他者の避難に関する情報を掲載することで、住民の避難を促進するような活用が期待されています。
ただし、公的文書では極端な表現ができないのが実情。誇張した情報で住民の背中を押すことはできません。そこで、もしもあなたの大切な人が避難することに迷ったり悩んでいるようであれば、「もう地域の人はみんな避難してるみたい、だからあなたも早く避難を」と声をかけてあげましょう。
これは家族や恋人や友人である、あなたにしかできない声かけです。
まとめ:早めの避難は減災の基本
お住まいの地域で災害が起こる危険性が高まったら、ためらうことなく避難しましょう。「避難したのに何も起こらなかった」のであれば、それは立派な避難訓練となります。近隣に避難を渋っている方がいれば、ぜひ声をかけて。早めの避難は、どんな災害においても被害を最小限に留めるために有効な手段です。
執筆・監修:D.Sata/SAIBOU PARK/防災士
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