Vol.188

2025最新【やさしく解説】南海トラフ発生確率はなぜ改定に?被害想定には変更なし!

「確率が二つの数字になった」のはなぜ?

ニュースで「南海トラフ巨大地震の発生確率が改定された」と聞いて、「結局どういうこと?」「危険度が下がったの?」と混乱した人もいるかもしれません。

これまで、この巨大地震は「30年以内に80%くらいの確率で起こる」と言われてきました。しかし、2025年9月、政府の地震調査委員会は、この確率を「60%〜90%程度以上」と「20%〜50%」という、二つの異なる数字で発表しました。

一見すると、低い方の数字(20〜50%)を見てホッとするかもしれませんが、これは警戒を緩めていいサインではありません

むしろ、最新の科学的な発見を踏まえて、「私たちは最悪の事態を想定して備えるべきだ」という、さらに強いメッセージが隠されているのです。今回の改訂で、何がどう変わったのか、そして私たちは何をすべきか、わかりやすく解説します。

確率が変わった理由:地震は「いつも同じ」じゃなかった

なぜ、突然一つの確率が二つの数字になったのでしょうか?その理由は、地震の研究が進み、「南海トラフ地震は、私たちが思っていたよりずっと複雑で多様なパターンで起こるらしい」とわかってきたからです。

以前のシンプルな考え方  (「固有地震モデル」の限界)

以前の計算は、「この地震はだいたい100〜200年に一度、いつも同じ場所で同じくらいの規模で起こる」という、シンプルで規則的な前提に基づいていました。

出典:内閣府・気象庁「南海トラフ地震ーその時の備え

最新研究でわかった驚きの事実

しかし、海底の地層や津波の痕跡(津波堆積物)を調べた結果、こんなことがわかってきました。

1.「記録を超える巨大津波」の存在: 過去に記録されている中で最大級とされていた1707年の宝永地震(ほうえいじしん)による津波よりも、はるかに巨大な津波が、それよりも前の時代に起きていた可能性がある。

2. 規模のバラつき: 地震の大きさ(エネルギーの溜まり方)は、毎回均一ではなく、かなりバラつきがあるらしい。

つまり、「いつも同じ」というシンプルな前提が、必ずしも正しくないことがわかったのです。

出典:地震調査研究推進本部 / 南海トラフ巨大地震の震源域と発生時期の多様性を示す時系列図
(日向灘、南海、東海における震源域の連動やバラつきが確認できる。)

「二つの数字」のカラクリを理解しよう!

地震の起こり方が複雑だとわかったので、研究者たちは「一つの計算方法だけではリスクを正しく表せない」と考えました。そこで、二つの異なる考え方(計算モデル)で確率を計算し、両方を公開することにしたのです。

算出された確率この確率を出した
計算方法(モデル)
この数字の裏側にある考え方
高い確率:60%〜90%程度以上不確実性を考慮したモデル
すべり度依存BPTモデル
地震の起こる間隔だけでなく、地震のエネルギーの「バラつき」も考慮に入れて計算した、より厳しい予測
低い確率:20%〜50%発生間隔のみのシンプルなモデル
BPTモデル
単純に過去の地震の起こった間隔だけを基準に計算した
予測。
 出典:地震調査研究推進本部 / 2つの計算モデルにより算出された確率

防災対策で重視すべきは、もちろん「高い方」!

では、私たちはどちらの数字を信じればいいのでしょうか?
政府の指針は明確です。それは「疑わしいときは行動せよ」という考え方。

低い方の確率の可能性もゼロではありませんが、災害対策においては、「最悪の事態(高い確率の方)を想定して動くべきだ」ということです。

つまり、確率が二つになっても、私たちは「60%〜90%程度以上」という高い切迫性を念頭に置き、防災対策を進める必要があるのです。

出典:内閣府・気象庁 / 南海トラフ地震ーその時の備え

【重要】被害想定には変更なし!

確率の表現は変わりましたが、地震が起こった場合の「被害想定」には変更はありません

内閣府の想定(令和元年公表)では、最悪の場合、全国で約23万1,000人が亡くなり、建物は約209万棟が壊れたり焼失したりすると予測されています。ライフライン(電気・ガス・水道)も広範囲で長期間ストップします。

つまり、数字がどう表現されようと、南海トラフ地震の脅威は何も変わっていないのです。

「明日にも起こるかも」という意識で備えよう

「確率が改訂された」というニュースは、最新の情報に基づいて、私たちの備えをアップデートする良い機会だと考えましょう。

政府は建物の耐震化や家具等の転落・落下防止対策を進めることで、死者数は60〜80%減らせるとしています。

また津波に対して発災後すぐに全員が避難することや、電気火災の発生を抑制する感震ブレーカーを設置することも、想定死者数を大幅に減少させる有効な手段として期待されています。

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特に次の3つの備えを今日から見直しましょう。

1.家具の徹底固定と感震ブレーカー
 ・大きな地震で、家具が倒れて怪我をすると逃げられません。寝室やリビングの家具を壁に固定しましょう。
 ・電気火災を防ぐ感震ブレーカーの設置も効果的です。

2.備蓄品は「1週間分」を目安に
 ・支援物資が届くまでに時間がかかるため、水・食料・薬を1週間分を目安に備蓄しましょう。
 ・簡易トイレは水や食料と同じくらい重要です。忘れずに用意しましょう。

3.避難場所・連絡方法の確認
 ・学校や塾、バイト先など、家族がバラバラの時に地震が起きた場合の連絡手段集合場所を決めていますか?
 ・自分の地域のハザードマップや、津波が来た場合の避難経路をもう一度確認しましょう。

南海トラフ巨大地震は「いつか起こる」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」大災害です。今、私たちが起こすアクションが、未来の自分と大切な人の命を守ります。

執筆:SAIBOU PARK MAGAZINE編集部
監修:SAIBOU PARK/防災士

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