Vol.152
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消防設備業界の未来に変革を!総合防災のサイボウと「ビルメ」のWAVE1が業務提携
総合防災の株式会社サイボウ(以下、サイボウ)、スマホ向けアプリ「ビルメ」を開発・運営する株式会社WAVE1(以下、WAVE1)の2社は、新たな事業の展開に向けた業務提携を結ぶことになりました。今回は両社から結城剛社長と吉村拓也社長をお招きし(以下、敬称略)、対談形式で新事業や展望についてお話しを伺いました。
業界の人手不足に新しい風を
企業の事業概要を教えてください。
(結城)サイボウは、消防設備の点検・工事・メンテナンスや、消防・防災用品の提案販売などを手がける総合防災企業です。
(吉村)WAVE1は、同じく消防設備点検や工事を行いながら、消防設備の人手不足を解消することを目的としたサービス「ビルメ」を運営しています。
「ビルメ」は、どんなサービスですか?
(吉村)消防設備点検の現場で働ける、業界特化型の副業紹介サービスです。多くの設備点検を行っている企業には、スポット的に人手が不足するという課題があります。
そこで企業側には「ビルメ」上で、案件ごとの人材に求める資格や現場スキルを登録していただきます。ワーカー側には、保有する資格や現場スキルを登録した上で、案件を検索していただきます。お互いに条件の合う案件があればマッチングとなり、指定の現場にワーカーが出向き業務を行い、報酬を得ることができる仕組みです。
どんな方が「ビルメ」に登録されていますか?
(吉村)消防設備業界に従事している、会社員や個人事業主の方もいらっしゃいます。
ただ圧倒的に多いのは、消防設備士の資格を持ちながらも本職としては別の職種として働いている方です。具体的には電気工事士、ビル管理会社、建設業者、工場勤務といった方が多いですね。最近は、まったく別の業界から副業を目的に、消防設備士の資格取得を目指す方が増えています。
人材育成のための施設が誕生
どういった業務提携がスタートするのですか?
(結城)現在サイボウでは、消防設備点検・工事の研修センター開設に向けた準備を進めています。研修センターでは座学に加えて、これまで現場でしか教えることのできなかった、きめ細やかな実践的な指導を目指しています。この現場を想定した実践教育の部分で、WAVE1に協力をいただきたいと考えています。
どんなきっかけがあったのでしょうか?
(結城)私が副理事を務めている全国消防機器販売業協会に、吉村社長が新しく参加されました。集会でご挨拶した際に、サイボウの研修センターの話をしたところ「ぜひWAVE1の教育施設として使わせてください」と仰ってくださり。さっそく弊社社屋ではスクールとして人材トレーニングを開始していて、研修を積んだ方が「ビルメ」を利用して活躍されています。
(吉村)これまで私たちは、ワーカーと現場に同行する形で実務を通した教育を行っていました。
ひと口に消防施設といっても電気、水、ガスなど、学ばなければいけない範囲が膨大なので、依頼のあった現場だけで学ぶには相当な時間がかかってしまうのが実情です。そこで結城社長から人材育成のための施設が誕生すると聞いて、ぜひ業務提携をと申し出させていただきました。
スキルの水準を明確化する
今回の業務提携にはどんな意味がおありですか?
(結城)上司や先輩に「背中を見て覚えろ」と言われて学ぶのではなく、1から10までを教えてくれる教育機関が誕生すれば、業界の人材育成を加速できると考えています。
サイボウの研修センターでトレーニングを積んで、「ビルメ」で実務経験を蓄積していくというワンストップの仕組みは、この業界を発展させる流れになっていくと思います。
(吉村)サイボウは50年以上の知見が蓄積されているので、「どこまで教えれば、どのレベルの案件まで通用するか」という感覚を明確にお持ちです。そういった経験豊かなプロフェッショナル集団と一緒に、段階ごとの教育カリキュラムを作り上げていけば、非常にレベルの高い人材育成ができると期待しています。
ステップアップ方式で活躍の場が広がるのですね。
(結城)弊社では消防設備点検・工事のノウハウを、問題集形式のオリジナルテキストにして社員教育用の教材として活用しています。それを基にした筆記試験に合格すると、レベルごとに「サイボウライセンス」という資格が獲得でき、これを社内の人事評価制度にも使っています。この仕組みとWAVE1が現場での指導に使っているカリキュラムを掛け合わせると、研修センターでの人材育成に役立つのではないでしょうか。
ひとりずつ評価を下していくことで、個人のスキルレベルが明確になれば、他社でも社内の人事考課に使えますし、個人事業主のワーカーであれば単価の適正化にも繋がります。
(吉村)現場のノウハウが詰まった問題集があり、筆記試験で「サイボウライセンス」が取得できるのであれば、オンラインでの受験も考えられますね。これが業界全体に浸透すれば、依頼主としても現場ごとに必要な人材のリクエストを明確に出しやすくなりますし、予算管理のコントロールがしやすくなります。
革新的な人材育成の潮流になりそうですね。
(結城)ゆくゆくは、点検だけでなく工事までできる人材の育成を睨んでいます。というのも建物の安心・安全を実現するためには消防法だけでなく、建築基準法もカバーする必要があります。建築士や建築設備検査員の資格を持っている方も集められれば、業務の幅がグッと広がります。具体的には消防設備会社、設計会社、電気工事や空調工事を請け負うサブコン、メーカーなどにも、教育された人材を派遣できるようになれればと。
(吉村)その通りです! 消防設備業界だけの人手不足を解決すればいいのか、というと、そうではなく。近しい周辺業界のみなさんも同じ課題で困っているので、そこも解決していきたいんです。それは創業時から思っていたので、あえてサービス名には「消防」という言葉を入れず、ビルメンテナンス業界全体の人手不足や、ビルにまつわる悩みを解決するぞという思いで「ビルメ」と命名しています。
業界全体の価値を高める取り組み
消防設備業界の展望はいかがお考えですか?
(結城)毎年の法定点検や、法改正に対応する施工などで、仕事の量は安定している業界です。ただ人手不足の時代では、人材が集められるということが何よりもの強みになっていくと思います。もう、まもなく「仕事はあるけど、人がいない」という状況に陥る企業が続々と出てくるでしょう。だからこそ、弊社とWAVE1で人を集めて研修をして、という流れが非常に強力なんです。私は最終的には、人手が揃えられる組織が強いと思います。
(吉村)本当にそうですね。結城社長のように頭を柔らかくして業界のことを考えられる、自由な発想を持たれている方は本当に珍しいので感銘を受けています。
(結城)私も吉村社長のような、新しい考え方の人としか仕事がしたくないと思っていて(笑)消防設備業界には、企業からの仕事を請け負うことが多いために、自ら「どうせ下請け」のような感覚を持っている人も少なくありません。ITの力で人を集めて教育して、人材を派遣できるまでに成長できたら、もっと消防設備業界の価値が高くなると思いませんか?
自分の会社の価値を上げるとか、業界従事者の社会的地位を高めるためには、そうした新しい発想の転換が必要だと考えています。
まとめ:新たなスタンダードを目指して
最後に今後のビジョンを教えてください。
(吉村)業界の人手不足を解消すれば、各社とも受けられる案件の数が増え、売上の向上に繋がります。私たち2社が今回の業務提携をきっかけに動き始めることで、防災設備とその周辺業界で働くすべてのプレーヤーの発展に繋がるような流れを目指したいです。
(結城)弊社の創業理念は教育第一経営ですので、今回の提携のように業界全体の人材不足を解消したり、知識と技術を伝承したりすることは非常に重要な取り組みだと捉えています。業界の何歩か先をいく話ですので、中には驚かれる方がいるかもしれません。私たちが新しいスタンダードを作り示すことで、消防設備業をさらに盛り上げ、業界全体を発展・向上させていきましょう。
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
取材・執筆:D.Sata/SAIBOU PARK MAGAZINE編集部/防災士
取材先紹介
吉村 拓也 株式会社WAVE1/代表取締役社長
TAKUYA YOSHIMURA1990年生まれ。大阪府出身。「消防設備業界に革命を」
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