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Vol.89
地震予知の最前線!デマと科学を冷静に見極める方法
地震の「予知」はできない
未来に発生する地震の、時間・場所・規模を特定するような「予知」はできません。その理由は、地震が発生する直前に起きる現象の科学的な立証ができていないからです。そもそも地震の発生前に、何かしら決まった事象が起きているかどうかすら証明されていません。
台風や大雪であれば「低気圧が発達してきた」「寒気が流れ込んできた」など、当該の現象が起こるまでの要因・プロセスを明確に捉えることができるため、事前に警告を出すことができます。ところが地震には発生前の予想材料がないため、科学的に予知する手法が確立されていないのです。
こんな情報には注意
それにも関わらずインターネット上では、未来の地震を「予感」させるような予知情報が飛び交います。パッと目に入ったセンセーショナルな情報をうのみにしたり拡散せず、どんな人物・組織から発された情報なのかを念入りに調べることが大切です。
以下の一覧は、よく話題になりがちな地震の「予知」を匂わせる投稿の代表例です。
◆超能力者が予言した
超常的な能力があるとされる人物、もしくは未来から来たという人物が未来の地震を予言したり、歴史上の人物が残したとされる言葉や書物などを将来の地震発生に結びつけて解釈したりするもの。
◆法則性、規則性を訴える
A地点で地震が起きたあと「過去にはA地点で地震が起きた数日後、B地点でも地震が起きた」という規則性を訴えるもの。〇〇の法則などと呼ぶことも。特定の日付や時間帯に地震が起こりやすい、などといった主張もある。
◆独自の観測データを掲げる
投稿者オリジナルの計測を行い、あくまでもデータに基づく情報だとして、地震予知に結びつけるもの。独自の機器を使う場合から、地鳴りが聞こえた、ペットが暴れたといった報告まで幅広い。
◆陰謀論
特定の集団や組織が特殊な装置を使って人工的に地震を発生させている、もしくは海底工事などによって人類が地震を引き起こしていると主張するもの。
◆珍しい雲を見かけた
地震の前には特殊な雲が発生すると信じ、見慣れない形の雲を「これだ」と撮影してネット上に投稿されるもの。ただし「富士山に笠雲がかかると、近いうちに雨が降る」といった天気にまつわる一部の通説は、科学的にも説明されている(地震と雲の関連性は立証されていないので注意)。
◆海洋生物が打ち上げられた
イルカなどの海洋哺乳類、リュウグウノツカイなどの深海魚が普段は姿を見せない浅瀬に現れたり海岸に打ち上げられたりすると「海の中で、地震につながる異変が起きている」と騒がれるもの。
珍しい現象を目の当たりにしたり、もっともらしく説得されれば、誰でも「地震が起こるかも」と思ってしまうことがあるかもしれません。そんな時は、やみくもに恐れたり恐怖心を周囲に拡散するのではなく、まずは自宅や身の回りの防災対策を見直しましょう。
事前警告できる地震とは
地震の発生時期や場所・規模をピンポイントで予知する科学的な手法は確立されていません。それでも予測される巨大地震に対しては、1秒でも早く警戒情報を出すために公的な取り組みが行われています。
南海トラフ沿いで異常な現状が観測された場合など、地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価されると「南海トラフ臨時情報」が発表されます。この情報名のうしろには「(調査中)」または「(巨大地震警戒)」など、発表時の状況を示すキーワードが付記されます。
気象庁は南海トラフ沿いにおけるマグニチュード6.8以上の地震やプレートのひずみの変化など、異常な現象を観測すると、まずは5〜30分後に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表します。その後すぐに専門家で作る評価検討会が巨大地震との関連性を検討し、最短2時間で結果を発表。これを受けて政府や自治体からは、先述のキーワードに応じた防災対応が呼びかけられます。
猶予は数秒から数年?
そもそも既にマグニチュード6.8以上の地震が起きているのに、さらに未来の地震を警告する臨時情報を出すことに意味があるのか、疑問に感じるかもしれません。
世界の過去事例では、マグニチュード8以上の地震が発生した後に、隣接するエリアでマグニチュード8クラス以上の地震が発生した事例は、103事例中、7日以内に7事例、3年以内に17事例が知られています。南海トラフでも同様の事象が起こる危険性があるため、一度でも南海トラフ沿いで地震が発生した場合には注意が必要なのです。
過去に発生した記録が残っている南海トラフ沿いの大規模地震8事例のうち、少なくとも5事例は東側・西側の両領域がほぼ同時もしくは時間差をもって揺れています。
もし臨時情報が発表されたら
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表された場合は、日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる準備をします。地震発生後の避難では間に合わない可能性のある住民は、1週間の事前避難を行う必要があります。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された場合は、事前の避難は伴いませんが、日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる準備をしましょう。
いずれにも当てはまらない現象と評価した場合は「南海トラフ地震臨時情報(調査終了)」が発表されますが、大規模地震発生の可能性がなくなったわけではないので、警戒しながら通常の生活を行います。
また南海トラフ沿いで異常な現象が観測されず、何の発表もなく突発的に南海トラフ地震が発生することもあります。逆に、臨時情報は発表されたものの南海トラフ地震が発生しないこともあります。いずれにしても南海トラフ地震が起きる可能性は高まった状態が続いているので、地震はいつ発生してもおかしくないと心得ておきましょう。
まとめ:「備えは」最大の防御
南海トラフこそ集中的に警戒されていますが、首都直下型地震をはじめ、日本各地にはひとたび起これば激甚な被害を出すような潜在的地震がいくつも存在しています。大切なのは地震の発生を予知できる・できないではなく、いつ起きてもいいように万全の準備を用意しておく、ということ。
しっかりと備えが整っていれば、あやふやな情報に気持ちが揺らいだり無駄に不安を感じる必要もなくなります。身辺の防災対策が万全ではないと感じるのであれば、今すぐにでも備えを充実させましょう。
執筆・監修:D.Sata/SAIBOU PARK/防災士
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出典
内閣府/南海トラフ地震防災対策
https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/index.html
気象庁/南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/info_criterion.html
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