Vol.36

南海トラフ地震はいつ起こる?【2023年版】被害想定とXデーに向けて今すべきこと

改めて知るべき「南海トラフ」の姿

日本は世界有数の地震大国ですが、なかでも差し迫った脅威として耳にすることが多い「南海トラフ」という言葉。正しく恐れるためには、まず日本を取り巻く環境を知る必要があります。

地球の表面は「プレート」と呼ばれる十数枚の岩板に覆われています。それらは少しずつ動いていて、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる境界線もあれば、陸のプレート同士がぶつかり合って隆起しているところも。その影響で、プレートの境界あたりでは地震活動や火山活動が多く発生します。

海のプレートであるフィリピン海プレートが、陸のプレートであるユーラシアプレートの下に潜り込んでいく境界線が、南海トラフ

日本周辺には4つのプレート(ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)が密集しています。フィリピン海プレートは、ユーラシアプレートの方向に進んでいて、最後はユーラシアプレートの下に沈み込んでいきます。この2枚のプレートの境界線は、海底を走る細長い溝になっています。

この東海地方から紀伊半島、四国にかけての南方沖約100kmをほぼ東西に走る、海底にある長さ700kmの細長い溝が「南海トラフ」と呼ばれているものです(トラフ、とは海底地形のうち細長い凹地のことを意味します)。

海底の大陸プレートを押し曲げながら、海洋プレートが沈み込んでいく
大陸プレートの「ひずみ」が限界に達して、一気に跳ね返ることで地震と津波が発生する

海のプレート(フィリピン海プレート)が沈み込んでいくとき、同時に陸のプレート(ユーラシアプレート)は引きずり込まれ、少しずつ「ひずみ」を蓄積していきます。そして限界点に達すると、陸のプレートは「ひずみ」を解放して、一気に元の状態に戻ろうとします。この跳ね返りはプレート間の境界で大規模な破壊を起こし、それが大地震として私たちに伝わるのです。

このタイプの地震は海底で起こるため「海溝型地震」と呼ばれます。M8クラス以上の巨大地震になることが多く、広範囲にわたって被害をもたらし、大津波が発生しやすいのが特徴。東日本大震災を起こした2011年の東北地方太平洋沖地震も、この海溝型地震でした。

複数の震源域が同時多発的に揺れる恐怖

南海トラフは、「東海」「東南海」「南海」という3つの震源域に分けられています(さらに西側に広がる日向灘までを含める説も多い)。この複数の震源域は、短期間のうちに連動する形で過去に何度も大地震を起こしていることから、今後も大震災の引き金になるものとして危険視されています。この一連の大地震こそが、総称して「南海トラフ地震」と呼ばれている天災の正体です。

なお南海トラフ地震の発生パターンは毎回大きく異なり、東海・東南海・南海すべての震源域で同時に発生したこともあれば、数年の時間差で次々と揺れたこともありました。そのため、震源域を個別に見るのではなく、南海トラフは連動しながら一体となって揺れるものとして考えるのが一般的です。

すでに待ったなしの秒読み段階

静岡県の駿河湾から、四国最南端の足摺岬の沖合に広がる南海トラフでは、過去に100〜150年の周期でM8.0〜8.7規模の巨大地震が繰り返し起こってきました。このことから、前回の南海トラフ地震(1944年の昭和東南海地震および1946年の昭和南海地震)が発生してから70年以上が経過した現在、つぎの南海トラフ地震は目前にまで差し迫っていると警鐘が鳴らされているのです。

一方で、2011年に東北地方太平洋沖地震が発生したことは、わずか数百年のデータから地震の規則性を見出し、次に起こる地震・津波の発生時期・規模を想定することの難しさを示す教訓となりました。

また過去に南海トラフ地震が発生した地域で、地層中の津波堆積物を調査したところ、歴史上の記録をはるかに上回る巨大地震が有史以前に発生していたことを示唆する証拠が見つかっています。このことからも、やはり人類史上に残っている記録だけを頼りに災害の発生時期・規模を予測するのは難しいとされています。

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南海トラフ地震はいつ起こるのか

地震大国である日本では、長年にわたって地震を予知するための研究も行われてきました。それでも現在の科学的知見からは、地震発生の日時・場所・規模を当てる「予知」は不可能とされています。

とはいえ先述のように、周期的に発生するタイプの地震は、地震が起きていない期間が長くなるほど発生確率が高まります。そこで政府の地震調査委員会は2022年1月、南海トラフで今後40年以内にM8.0〜9.0の巨大地震が発生する確率を、前年までの「80~90%」から「90%程度」に引き上げました。

同様に30年以内では「70〜80%」の確率で発生すると予測。その被害は、四国や近畿、東海などの広域に及び、東日本大震災を大きく上回ると想定しています。

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衝撃の最新被害予測

令和元年、政府は南海トラフで起きることが予想される「最大級」の地震をベースに、被害想定を再計算し公表しました。内閣府のデータによると最悪の場合、全国でおよそ23万1,000人が死亡し、揺れや火災、津波などで約209万棟の建物が全壊もしくは焼失すると推計されています(うち地盤の液状化によって全壊する家屋は11〜13万棟)。

さらに発災直後のインフラ被害想定は約2930万世帯での停電、断水によって約3570万人が上水道を、約3460万人が下水道を利用できなくなり、約180万世帯でガスの供給が停止。さらに家庭内備蓄や被災都府県・市町村の公的備蓄だけでは食料が不足することも想定されていて、その不足量は発災後3日間の合計で最大約 2,100 万食とされています。

発災直後の帰宅困難者は中京圏で約410万人、近畿圏で約660万人と予測。断水の影響から、1週間後には約880万人の避難者が発生し、避難所での生活を余儀なくされる避難者は約460万人にまでのぼるとされています。

まとめ:命と暮らしを守るためにできること

被害想定と同時に、政府は建物の耐震化や家具等の転落・落下防止対策を進めることで、死者数は60〜80%減らせるとしています。また津波に対して発災後すぐに全員が避難することや、電気火災の発生を抑制する感震ブレーカーを設置することも、想定死者数を大幅に減少させる有効な手段として期待されています。

先述のとおり、南海トラフ地震では数千万世帯がインフラ被害を受け、数百万人が避難者としてサポートを必要とする状況に陥ります。道路がひどく損傷すれば、遠地からの支援物資などが遅延・縮小せざるを得ない状況も想定されます。新型コロナウイルスの感染拡大が続く今、避難所での生活は以前よりも厳しいものになることを想定せざるを得ません。地震・津波を生き抜き、さらに災害後もコロナ禍での生活を続けていくためには、各家庭や職場での防災対策、防災備蓄を充実させることが欠かせません

南海トラフ地震は「いつか起こる」のではなく「いま起きてもおかしくない」大災害です。今あなたが防災のために起こすアクションは、未来のあなたや、あなたの大切な人を守ることに直結します。天災は、起こってしまってからは備えられません。大切な命と暮らしを守るため、今すぐ行動を起こしてください

執筆・監修:D.Sata/SAIBOU PARK/防災士

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出典

内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ/【参考】南海トラフ巨大地震の被害想定(施設等の被害・経済的な被害)(再計算)(令和元年6月)

http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/nankaitrough_info.html

 

独立行政法人海洋研究開発機構/津波堆積物からわかる巨大南海地震の歴史

https://www.jamstec.go.jp/donet/rendou/report/predict02.html

目次

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