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Vol.49
ペットにも防災の備えを!同行避難にドッグスリングという選択肢
洪水や地震などの災害で避難を余儀なくされたとき、環境省はペットについて同行避難を基本としています。同行避難とは、ペットを連れて自宅から避難所まで移動する行動・行為のこと(避難所で、ペットと人が同じスペースで過ごすことを指すものではありません)。
そんな災害時の同行避難に役立つとして、いま注目を集めているのがドッグスリング(犬用抱っこ紐)。肩からかけた布でペットをくるみ、胸で抱き抱えるためのアイテムです。本来は犬を抱っこするために開発した商品ですが、思いがけず防災グッズとしても需要が高まっています。
熊本地震で気づかされた可能性
いざ発災後に避難しようにも、そこに広がるのは様変わりしてしまった街並み。不安に思うのは人間だけではありません。緊張感が漂う状況は、ペットにとっても強いストレスを感じる環境。いつもは穏やかな性格のペットも、不安から普段見せないような行動を起こしてしまうことがあるといいます。
2016年4月に起こった熊本地震では、多くの方とペットが被災。「愛犬と一緒に避難するためにドッグスリングを利用したところ、背中や両手が空いて便利だった、という感想をいただきました」そう話してくれたのは、ドッグスリング専門メーカー「erva(エルバ)」の黄瀬知美さん。もともとドッグスリングは、愛犬との散歩やスキンシップを目的に開発されました。ところが災害時の避難では、互いの心音や体温を感じて安心できるという特徴が真価を発揮。飼い主にとっても愛犬にとっても、不安の解消に役立ったという喜びの声が寄せられたそうです。
幸せな時間をより長く、快適に
「たくさんの愛犬家さんに『わんこと一緒にいる幸せな時間』をより長く、より快適に過ごしてほしい」。ドッグスリングにかける想いを語る黄瀬さんは、自分自身も愛犬家。日々ユーザー目線で商品を使いながら、機能性やデザインの改良を重ねているそう。よりコンパクトな商品や、アウトドアで使いやすいものを開発しているそうです。
普段から使うことが防災に
これまでに防災専用のドッグスリングが企画されたこともありましたが、最終的に防災専用の商品が作られることはありませんでした。その理由についてこう説明します。
「災害時、飼い主も愛犬も不安や恐怖を感じている状況で、いつも使っていないアイテムを急に使うことができるのかーー。そう考えたとき、大切なのは『普段使いのしやすさ』を追求することだと気づいたんです。日頃から安心して使っていただくことが、有事の際に防災グッズとして頼っていただけることに繋がるのではないでしょうか」。
人もペットも十分な備えを
自宅では災害対策としてペットボトルの水を定期購入したり、食料品のローリングストックを実践しているという黄瀬さん。「愛犬たちはドッグフードが苦手だったりアレルギーがあるので、普段は手作りのごはんを食べさせています。それでも防災用として、食べられる缶詰やドライ野菜・ミートを探しながら備蓄しています」。
人間の場合、非常食は最低限でも3日間、できれば1週間分の備蓄が望ましいとされています。ペットの場合は、それ以上に多めの備蓄が推奨されます。専用のフードやトイレなどは物流が正常に戻るまでに、より時間がかかることが想定されるからです。
まとめ:ペットを守ることは自分を守ること
ペットの防災について黄瀬さんは「熊本地震の被災者から改めて教えられましたが、災害時に愛犬・愛猫と一緒にいられることは、大きな心の救いになるんです。」と振り返る。「以前、阪神淡路大震災の被災者にもインタビューをしましたが、犬や猫と暮らしていた方は『この子のために頑張らんと』と、その存在に支えられながら前を向いていたんです。」
同行避難の備えをすることは、ペットの命を守るのと同時に、飼い主が躊躇なく避難できることで自らの安全を確保することに直結します。「その選択肢として、ドッグスリングを知っていただけたらと思います。我が子同然の愛犬たちを守るためにも、積極的に災害対策の情報を集めて、備えのアクションを起こしていきましょう。」
※ペットを隔離飼育できるケージ等の持ち込みが避難所の受け入れ条件になっている場合もあります。避難所の運営について、お住まいの自治体がペットの受け入れをどのように行っているか、かならず事前に確認しましょう。
執筆:SAIBOU PARK MAGAZINE編集部
監修:D.Sata/SAIBOU PARK/防災士
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